よそで居場所を

なくした人が、

最後に辿り着ける場所へ。


住宅型有料老人ホーム かぜのおと 代表

上司は選べません。上司を育てる順番は、選べます

上司は選べません

この文章は、いま老人ホームで働いていて、上司に恵まれずに辞めようかと考えている方に向けて書いています。それ以外の方に読んでいただくつもりはありません。介護の仕事に興味がある学生の方、待遇のいい職場を探している方、夜勤の少ない職場に移りたい方。どの方も大切ですが、この文章はその方々のために書かれていません。

想定しているのは、こういう状況の方です。仕事そのものが嫌になったわけではない。利用者さんの前では、まだ普通に笑える。おむつを替えるのも、食事の介助も、慣れてきた。けれど、事務室の扉を開けるときだけ、少し息を止めている。報告に行くと「で?」と返される。判断を仰ぐと「自分で考えて」と言われ、自分で考えて動くと「なんで勝手にやったの」と言われる。どちらでも怒られるので、だんだん報告の回数が減っていく。

そして、あるとき気づきます。自分がこの職場で困っていることを、誰にも言っていない。

もう一方に、こういう方もいらっしゃいます。ある日いきなり「来月から管理者ね」と言われた方です。研修も引き継ぎもなく、前任者はもう辞めている。シフトを組み、家族対応をし、部下の相談を受ける立場になった。けれど自分が誰に相談すればいいのかは、誰も教えてくれなかった。

私がこの文章で申し上げたいことは、一つだけです。転職先を選ぶとき、上司の人柄を見ても無駄です。優しい上司に当たれば楽になる、という考え方で職場を選ぶと、また同じところへ戻ります。なぜなら、人は異動し、辞めるからです。見るべきものは別にあります。上司が部下を育てる順番が、その施設で決まっているかどうか。それだけです。

私の施設では、管理者の層が、一度に六人続けて辞めた時期があります。一人が辞め、その次が辞め、また次が辞めました。残された現場は、判断できる人がいない状態になりました。新しい部長陣を集めるために、私は長く苦労しました。声をかけ、断られ、また声をかける。その繰り返しでした。

そのとき私が思い知ったのは、自分がそれまで「人」に頼って施設を回していたということです。あの人がいるから現場が持っている。あの人が見てくれているから新人が育つ。そういう状態を、私は良いことだと思っていました。頼れる人がいる職場は、良い職場だと。

違いました。頼れる人がいる職場は、その人が抜けた日に崩れる職場でした。六人が抜けたあと、現場に残ったのは、教える順番を知らない人たちと、教わる順番を知らない人たちだけでした。誰も悪くありません。決まっていなかっただけです。

私はそこから、人を見て採ることをやめました。採る前に、入った人が何をどの順番で教わるのかを決める。そちらを先に作る。順番が逆だったと気づくのに、私は何年もかけました。

数字の側から見ても、同じことが出ています。公益財団法人介護労働安定センターの令和5年度「介護労働実態調査」によると、前の職場を辞めた理由の第1位は「職場の人間関係に問題があったため」で、34.3%でした。前年度より6.8ポイント増えています。二番目は法人や事業所の理念・運営のあり方への不満で26.3%、三番目は他に良い仕事・職場があったためで19.9%、収入が少なかったためは16.6%でした。

つまり、辞める理由として最も多いのはお金ではありません。人間関係です。しかも、その差は小さくありません。賃金を理由に挙げた方の、二倍を超えています。

もう一つ、この調査で示されていることがあります。年齢層が低いほど「職場の人間関係に問題があったため」を挙げる割合が高くなる傾向がある、という点です。経験が浅い時期ほど、人間関係で辞めているということです。技術が足りないから辞めるのではありません。聞ける相手がいないから辞めています。

ですから、いまあなたが「人間関係で辞めようか」と考えていることは、弱さではありません。最も多い理由です。

この段で書ききれなかったことを、下に並べます。

ただ、理由が多いことと、次の職場で解決することは別の話です。

相談する相手がいない

ここでは施設の話をしません。あなたがいま置かれている状況を、できるだけ正確に言い当てることだけをします。

まず、あなたはおそらく「人間関係が悪い」と言われると、少し違うと感じます。怒鳴られているわけではない。いじめられているわけでもない。挨拶は返ってくる。だから人に相談しても「どこの職場もそんなものだよ」と言われて終わる。それがいちばんつらい。

具体的には、こういうことが起きているはずです。利用者さんの様子が少し違うと感じたとき、報告するかどうかを迷う。報告すれば「様子見でいい」と言われる可能性がある。言わずにいて何かあれば、あなたの責任になる。どちらに転んでも自分が損をする構造なので、迷っている数十秒のあいだに、胃のあたりが重くなる。

申し送りの時間に、言おうとしていたことを言わずに終わる日が増える。言っても伝わらないからではありません。言ったあとに返ってくる反応を、先に想像してしまうからです。

一年目の方であれば、こういう場面もあります。分からないことを二回目に聞くのが怖い。一回目は教えてもらえた。二回目に聞いたら「前に言ったよね」と言われた。それ以降、分からないまま自分で判断するようになる。判断が合っていたかどうかは、誰も教えてくれない。

管理者になった方であれば、別の重さがあります。部下から相談を受けたときに、答えを持っていない。持っていないと言えない。言えば頼りにされなくなると思っている。だから曖昧に答える。曖昧に答えた自分のことを、帰り道に思い出す。

そして、どちらの立場の方にも、共通して起きていることがあります。仕事が終わって家に帰ってから、職場のことを考えている時間が長い。

私は、陰で言われる側にいたことがあります。十年前、介護の知識がないまま起業したときです。褥瘡も知らないのか、と陰で言われていました。直接言われたのではありません。直接言われたほうが、まだ楽だったと思います。

初期の職員から馬鹿にされながら、それでも事業を続けました。何か新しいことをやろうとするたびに、空気が止まるのが分かりました。営業に行こうと声をかけても、誰も一緒には来てくれませんでした。断られたというより、話が流れていく感じでした。私は一人で出かけました。

あのころ私がいちばん消耗していたのは、業務の量ではありません。何を言っても届かない、という感覚です。届かないと分かっている相手に、それでも毎日話しかけなければならない。その繰り返しが、人を静かに削っていきます。

だから、あなたが「言えないまま辞めようとしている」ことの重さが、私には分かります。分かる、と軽く言うつもりはありません。ただ、あれは根性が足りないから起きるのではないと、私は自分の経験から知っています。

同じ調査は、人間関係の中身まで踏み込んで聞いています。「職場の人間関係に問題があった」と答えた方の内訳です。

最も多かったのは「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」で49.3%。ほぼ半分です。次に「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった」が43.2%。三番目が「同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった」で38.8%でした。

そして四番目に、こういう項目があります。「ケアの方法など仕事上の課題に関する上司や同僚との意思疎通・意見交換がうまくいかなかった」26.6%。

この四番目が、私はいちばん重いと思っています。悪意の話ではありません。話し合いが成立しなかった、というだけの項目です。怒鳴られたわけでも、無視されたわけでもない。ただ、ケアのことを相談する場が機能していなかった。それで四人に一人が辞めています。

あなたが感じている「言っても伝わらない」は、この項目に入ります。気のせいではありません。

この段で書ききれなかったことを、下に並べます。

問題は、これが次の職場で自然に解決するかどうかです。

性格の問題ではない

ここで、ひとつ考え方を変えていただきたいことがあります。

多くの方が「上司に恵まれるかどうかは運だ」と考えています。私もそう思っていました。そして、そう思われてきた理由があります。実際に、上司によって職場の空気は変わるからです。同じ法人の同じ建物で、階が違うだけで働きやすさが変わる。それを何度も見れば、運だと思うのが当然です。

もう一つ、根強い考え方があります。介護は経験年数が物を言う、というものです。長くやっている人のほうが分かっている。だから新しく入った人は、口を出さずに覚えるべきだ。この考え方も、理由があって生まれています。体で覚える部分が実際に多い仕事だからです。

ですが、この二つを信じたまま転職すると、何が起きるか。良い上司に当たることを祈って入り、当たらなければまた辞めることになります。そして、経験年数を理由に発言を控えるので、困っていることを言い出せないまま一年が過ぎます。

私が申し上げたいのは、別の見方です。上司が優しいかどうかは、人柄の問題ではなく、その人が「教える順番」を渡されているかどうかの問題である、ということです。順番を渡されていない上司は、忙しいとき必ずきつくなります。人が悪いのではなく、持っているものが無いのです。

私自身の経験で言うと、逆のことも起きました。利用者さんへの対応において、経験の長い職員よりも、私のほうが距離の詰め方がうまかったのです。

私は介護の知識がないまま始めました。代わりに、それまでマーケティングと心理学を学んでいました。人がどういうときに心を開き、どういうときに閉じるのか。そういう見方で利用者さんと向き合いました。

すると、経験十年の職員が手を焼いていた方と、話ができることがありました。私は介護技術では明らかに劣っていました。それでも、その方にとっては私のほうが話しやすかった。

このとき私が理解したのは、介護の力量は一本の線ではないということです。経験年数で測れる部分と、測れない部分がある。測れない部分を「センス」と呼んでしまうと、教えられなくなります。教えられないものにしてしまうと、できる人がいなくなった日に、施設ごと力を失います。

だから私は、六人が辞めたあとに決めました。人柄や勘に頼っていた部分を、できるだけ順番に置き換える。上司が部下を育て、育った部下が幹部になる。その流れを、特定の誰かの善意に預けない。誰が辞めても回る形にする。

この考え方は、調査の数字とも合います。先ほど挙げた内訳を、もう一度見てください。「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった」が43.2%でした。

この項目には、性格を表す言葉が一つも入っていません。管理能力。業務指示。リーダーシップ。すべて、やり方の話です。冷たい、意地悪、相性が悪い、という言葉ではありません。

つまり、四割を超える方が辞めた原因は、上司の人間性ではなく、上司の側に管理のやり方が無かったことです。指示が不明確、という言葉が示しているのは、上司が何を伝えるべきか決めていないということです。

もちろん、一番目の項目(きつい指導やパワハラ、49.3%)には人の問題が含まれます。ですが、きつい指導が生まれる場面を思い出してください。多くは、上司自身が追われているときです。余裕のない人が、余裕のない言い方をします。そして余裕は、段取りから生まれます。

この段で書ききれなかったことを、下に並べます。

ここまで来ると、選ぶときに見るものが変わってきます。

何を見て選ぶか

新しい見方に立つと、職場を選ぶときに確かめるものが決まります。三つです。

一つ目。入った人が、いつ何を教わるのかが決まっているかどうか。一か月目に何を覚え、三か月目に何ができるようになっているのか。これが答えられない施設は、教えることを個人の親切に任せています。親切な人に当たれば育ちますが、その人が夜勤明けで疲れていれば、その日は教わりません。

二つ目。困ったときに誰に言うのかが決まっているかどうか。「何でも相談してね」は、決まっていないという意味です。誰に、いつ、どの場で言うのか。その場が業務として時間割に入っているかどうかを見てください。入っていなければ、相談は休憩時間を削って行うものになります。

三つ目。上司が抜けたときに何が起こるかを、施設が想定しているかどうか。これは面接で聞きにくい質問ですが、聞く価値があります。想定していない施設は、いま上司が良い人であっても、その人が辞めた瞬間にあなたの働きやすさが消えます。

この三つは、求人票には書かれていません。給与は書けます。勤務時間も書けます。しかし「教える順番があるか」は、文字にすると全部の施設が「あります」と書けてしまいます。だから、書かれたものを読んで判断することはできません。

では、どうするか。聞きに来ていただくしかありません。

この段の体験が足りません。 いま実際にある教育の仕組みについて聞かせてください。入った方が一か月目に何を教わり、三か月目に何ができるようになるのか。誰が見て、どのくらいの頻度で話す場があるのか。面談・チェック表・研修など、名前が付いているものがあれば、その名前のままで構いません。また、その仕組みで実際に育った方がいらしたら、いつ入った方で、何ができるようになったかを教えてください。ここが埋まらないと、この段は「基準を示しただけ」で終わり、なぜ当施設がその基準を満たしているのかを書けません。

外の数字も、この三つを見るべき理由を支えています。

同じ調査で、働く上での悩みとして最も多かったのは「人手が足りない」49.9%でした。次が「仕事内容のわりに賃金が低い」37.5%、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」29.3%、「精神的にきつい」22.5%、「有給休暇が取りにくい」20.5%と続きます。

人手不足が半数を占めている、という事実をどう読むかです。人手が足りない職場では、教える時間が最初に削られます。削っても今日は回るからです。回らなくなるのは半年後、教わらなかった人が判断を誤ったときです。

そして人手不足は、当分なくなりません。厚生労働省が公表した推計では、2022年度に約215万人だった介護職員を、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人まで増やす必要があるとされています。2022年度と比べて、約57万人の増員が必要という計算です。

この数字は、あなたにとって二つの意味を持ちます。一つは、介護の仕事が無くなる心配はないということ。もう一つは、どの施設も人を集めたいので、採用される側であるあなたに選ぶ権利があるということです。

この段で書ききれなかったことを、下に並べます。

選べるのであれば、基準を持って選ぶべきです。

三か月後の朝

手に入るものを、先に申し上げます。

三か月後、あなたが変わっていると私が考えているのは、能力ではありません。朝の行動です。

いま、あなたは出勤して事務室の扉を開けるときに、少し息を止めています。その日の当番が誰かを確認してから、報告する内容を頭の中で組み立て直している。言い方を間違えないように。突っ込まれないように。

それが要らなくなります。要らなくなる理由は、あなたが強くなるからではありません。報告する場が、時間割の中に決まっているからです。決まっている場で話すことは、勇気の問題ではなくなります。順番が来たから話す、という行為になります。

もう一つ変わるのは、家に帰ってからの時間です。職場のことを考えている時間が短くなります。持ち帰る「あれは言うべきだったか」が減るからです。言う場が決まっていれば、その場で言い終わっています。

一年目の方であれば、二回目に質問できるようになります。二回聞いても怒られないと分かっているからです。分からないことを分からないと言えるようになると、判断を一人で背負う回数が減ります。背負う回数が減ると、夜眠れるようになります。

管理者を任されて行き詰まった方であれば、変わるのは「自分が誰に相談するか」です。答えを持っていないときに、持っていないと言える。言っても頼りにされなくなるわけではないと分かる。それが分かったとき、部下に対する言い方が自然に変わります。優しくしようと努力するからではありません。余裕ができるからです。

この段の体験が足りません。 実際に変わった職員の方について聞かせてください。人間関係で悩んで入ってきた方、あるいは管理者になった方で、入る前と今とで変わった方がいらしたら。いつ入られて、何に困っていて、どの時点で変わったか。お名前は出しません。この段は「入ったあとどうなるか」を見せる段ですので、実際に変わった方が一人いるかどうかで、説得力がまったく違います。

数字の側から見ると、この変化は現実的な話です。

先ほど挙げたとおり、辞めた理由の第1位は人間関係で34.3%でした。裏を返せば、人間関係の問題が解決している職場では、辞める理由の最大の塊が消えているということです。賃金でも、身体的負担でもありません。いちばん大きい塊です。

悩みの内訳も、同じことを示しています。「精神的にきつい」が22.5%、「身体的負担が大きい」が29.3%。身体の負担は仕事の性質上、完全には無くなりません。腰は痛くなります。しかし「精神的にきつい」の中身は、先ほど見た内訳と重なっています。言えない、伝わらない、相談できない。

身体の負担は減らせませんが、精神の負担は段取りで減らせます。減らせる側に手を打っている施設かどうかを、確かめる価値があります。

この段で書ききれなかったことを、下に並べます。

ここまでお読みいただいた方に、していただきたいことは一つだけです。

手に入るものを、改めてまとめます。

面接に来てください

面接にお申し込みください。それだけです。

募集の条件は、[募集要項のページ](/recruit/)にまとめています。先に条件を確かめてからお申し込みいただいて構いません。

履歴書を完成させてから、とは申しません。辞める決心がついてから、とも申しません。いま在職中であること、迷っていること、他も見ていることを、そのまま言っていただいて構いません。

お申し込みのあと、何が起きるかを書いておきます。日程を調整し、私がお会いします。その場で、先ほど挙げた三つを確かめてください。入った人がいつ何を教わるのか。困ったときに誰に言うのか。上司が抜けたときに何が起こるか。この三つを、こちらから説明するのではなく、あなたから聞いてください。答えられなければ、お断りいただいて構いません。

その日に決めていただく必要はありません。持ち帰って、いまの職場と比べてください。比べるための材料をお渡しするのが、この面接の目的です。

なぜ私が、採用の場でこういう言い方をするのか。最後にそれだけ書かせてください。

私は十年前、介護の知識が何もない状態でこの事業を始めました。もともとやっていたのは地域づくりの仕事です。その延長として、住まいと支援が必要な方のための場所を作りました。専門家として始めたのではありません。だから、分からない側の立場を知っています。褥瘡も知らないのか、と陰で言われる側にいました。

そして、管理者が一度に六人辞めた時期を経験しました。人に頼って回していた施設が、人が抜けた日に崩れるところを見ました。あのとき困ったのは私だけではありません。残された職員が、判断できる人のいない現場で働きました。

私は、あれをもう一度起こしたくありません。そのために、人柄に頼らない形を作る側へ舵を切りました。

数字を並べて申し上げたことは、一つに尽きます。介護の仕事を辞める理由の最大の塊は、人間関係です。そしてその内訳は、性格の話ではなく、やり方の話でした。やり方であれば、変えられます。

上司は選べません。けれど、上司を育てる順番が決まっている職場は、選べます。

お申し込みの前に、気になりやすいことを下にまとめます。

面接のお申し込みを、お待ちしています。

追伸。

なぜ私が、求人のページにこれだけの字数を使ったのか。それだけ書かせてください。

十年前、私が始めたのは介護の事業ではありませんでした。地域づくりの仕事をしていて、その延長で、住まいと支援を必要としている方のための場所を作りました。専門家として参入したのではありません。知識はありませんでした。だから褥瘡も知らないのかと陰で言われ、初期の職員に馬鹿にされました。営業に一緒に行こうと声をかけても、話は流れていきました。一人で出かけた日のことを、いまでも覚えています。

そのころの私は、自分が場違いなところにいるのだと思っていました。専門家ではないのに、人の暮らしを預かっている。その後ろめたさが、ずっとありました。

考えが変わったのは、他の施設で受け入れを断られた方が、うちに来られるようになってからです。認知症が進んで、よそでは手に負えないとされた方々でした。その方々をお預かりするうちに、気づいたことがあります。どこにも居場所がなくなった人が、最後に辿り着く場所が必要なのだということです。そして、それを作れるのは、自分も居場所がなかった人間なのかもしれない、と。

管理者が一度に六人辞めた時期は、その次に来ました。残された現場を見て、私は自分のやり方が間違っていたと分かりました。私は「良い人を集めれば良い施設になる」と考えていたのです。実際には逆でした。良い人が入っても、教える順番を用意していなければ、その人の善意を使い潰すだけでした。

追い出された方を受け入れてきたつもりで、私は、働く人を追い詰める側に立っていました。

私がこれからやりたいことは、一つです。誰が辞めても回る形を作り、その上で、上司が部下を育て、育った部下がまた誰かを育てる流れを残すこと。人の善意に頼らない形にしておけば、たまたま入った人が、たまたま潰れることがなくなります。利用者さんにとっても、働く人にとっても、ここを「最後に辿り着ける場所」にしたい。 それが、いま私がこの事業でやろうとしていることです。

この文章は、うまく書けた自信がありません。ですが、一つだけはっきりしていることがあります。

私たちは、よそで居場所をなくした方を受け入れてきた施設です。利用者さんだけを、とは考えていません。

あなたがいま、職場で自分の居場所がないと感じているのなら、その感覚を、私はよく知っています。